中村(敦志)研究室
       
ホーム
ゼミナール
授業の紹介
英語の学習
アメリカの文学
リンク
過去のお知らせ
メール
                                        
ホーム ◆ゼミナール     ◆ゼミ論


2009年度ゼミ論
                               
   
        
MLBにおける人種差別問題
                                  
                             石橋 忠宗


 本論では、アメリカ合衆国の4大スポーツ、メジャーリーグ・ベースボール(MLB)における人種差別行為について調べ、考察していく。1995〜2009年現在にかけて急速に増加した日本人メジャーリーガー。イチロー選手を始めとした日本人メジャーリーガーの活躍は、私たち日本人にとっては喜ばしいことである。 しかし、多民族国家アメリカにおいて、日本人を含めた外国人選手はアメリカにおいて、どのような扱われ方をするのだろうか。メジャーリーグというアメリカの代表的なスポーツの世界から、アメリカにおける人種差別の実態を覗きたい。日本人メジャーリーガーは、アメリカにおいてどのような扱いを受けているのかを知りたい。そう思い、本論におけるメインテーマを「MLBにおける人種差別」とした。
 
 アメリカにおいて、白人から、黒人を始めとした有色人種への差別は100年以上の歴史がある。彼らが有色人種への差別をする理由については諸説があるが、そもそも差別という行為はなぜ行われるのだろうか。それは、自分のアイデンティティーを確立しきっていない者にそのような傾向が多くみられると筆者は考える。人間は、自分よりも優れている者に対して恐怖心や嫉妬心を強く持つ生き物である。そういった恐怖心や嫉妬心の元凶をなんとか断ち切ろう、排除しようといった考えから、差別行為が生まれる。差別をすることによって相手を過小評価し、自分の方が優れていると思いたいのだ。もし自らのアイデンティティーを確立していれば、そういった恐怖心や嫉妬心を持つ必要などなくなる。そうなれば、差別行為をすること自体がナンセンスなのだ。
 
 メジャーリーグにおける人種差別の違いを、1950年代と2009年現在のメジャーリーグで比較してみる。1950年代のメジャーリーグには、ある地域の者たちが外国人選手として活躍していた。彼らは、本国とアメリカとの物価の違いから、メジャーリーグへとやってきた。チームの戦力としては優秀ではあったが、彼らがアメリカの白人たちからは、良い存在とは思われていなかった。当時のアメリカはWASPの考え方が一般的であったからである。彼らがいくら白人の選手よりも良い成績を残しても、白人からそれを評価されることはないに等しかった。それは、彼らをスカウトする者たちに至るまで同じ考えであった。しかし彼らは、生活の糧としてメジャーリーグへと渡らざるを得なかった。 なぜなら、彼らの国は自国の野球リーグがなく、アメリカのメジャーリーグこそが唯一の公式野球の場であり、野球を仕事としてプレーできる場であったからだ。
 
 2009年現在、当時のような強い差別意識というものは、目に見える範囲では行われなくなるまでに改善された。白人は彼らのプレーを称えるようになり、優秀な選手にいたっては、尊敬の目で迎えられるになった。そして今では、世界中の幾多の人種が交じり合って、日夜プレーを重ねている。
 
 しかし、それでもなお人種差別は存在するのである。各々の心の中に潜んでいるものであるため、表に出ることはないが、それぞれの心中において、差別意識というものは健在だ。2000年にはそれを表に出す白人の選手がおり、問題になったこともあった。そのために、アメリカにおける人種差別は完全になくなったとは言いづらいのも事実だ。

 アメリカ合衆国が建国されてから2200年あまりが経った。現在は公の場における差別は減少したと言っていいだろう。しかし、白人による有色人種への人種差別が軽減され始めてから半世紀も経っておらず、彼らの偏見や差別意識というものは未だ根強い。逆をいえば、約半世紀で人種差別が緩和されるということも事実である。心に根付いている差別意識も、時間をかけて溶かしていくことも可能であると解釈出来る。

 異人種の共存という課題を解決するにはもう少し時間を要するが、本当の意味での「差別のないアメリカ」になるには、そう遠くないだろう。




 トップページへもどる