中村(敦志)研究室
       
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2009年度ゼミ論
                               
      
  アメリカ社会による
       人種差別の転換期

                                     
宇部 倫仁

 現代のアメリカ社会の中では、人種間での差別を感じることは少なくなっていると思われる。アメリカに限らず世界的に見ても、社会には多くの国の人種の人々が普通に交わり生活しているのが当たり前な世の中になっている。しかしそれらの当たり前な事柄は近年形成された人種間の平和であり、アメリカでの差別的な問題は、実際1960年代という極最近の時代まで平然と起きていた。

 1960年代以前のアメリカ社会では、黒人は、ただ苦しみに耐えて解放の時が来るのを待つのみであった。尚、解放へと時代が進んでも、白人至上主義の世の中では、黒人は白人に劣るという彼ら独特の考え方があった。仮に法律で守られても、実際は、白人達の黒人に対する思い込みの様な一方的な考え方が変わらない限り、差別など無くならなかった。
 
 具体的に、誰もが耳にしたことがあろう有名な黒人差別事件として、「バスボイコット事件」がある。これは米国南東部アラバマ州のモントゴメリーの市営バスで、差別的な座席制に抗議したが故に逮捕されてしまったローザ・パークスに対して解放を求め、解放までの期間バスを使わないというあくまで非暴力の抗議運動事件であった。
 
 この事件の抗議活動は当初、数ヶ月期限であったが、ローザを解放に導く為の期間、およそ1年間に渡り続けられた大きな抗議運動だった。この事件の判決に対し最高裁は、「バスの人種差別は違法である」と判決を下し、黒人達は差別に対する変革を起こせる可能性に大きな希望を持ち始めた。

 彼らの可能性を先導して行った人物は、マーティ・ルサー・キング牧師だった。キングの行動力は凄まじく、公民権運動によって黒人は権利を得られる様になるまでに、そう時間は掛からなかった。皆がキングの行動力と彼の訴えに共感した為に、この運動は驚異的なスピードで範囲を広めていった。さらに「アファーマティブ・アクション」という制度の誕生により、学校や会社に対し特別枠が与えられ、彼らの社会進出は拡大し、平等社会になりつつある社会へと進化した。

 当初は黒人達を大きく助長する素晴らしい法律だったが、現代では、そのアファーマティブ・アクションは、平等社会になったアメリカには不要な制度になった。あくまで当時の黒人救済制度であり、現代の平等社会には黒人を優遇して社会進出させる必要は無くなったからだ。

 全ては黒人達の力、さらにキング牧師という切実に、平等である事だけを望んだ必死の訴えが実を結び、今のアメリカ社会があるのだ。

 そもそも「黒人たちが悪である」などという一方的な考え方が自然にアメリカ社会に広まり、正当な理由も無く差別を受け続けたという事実が自分は到底信じられない。

 善悪という言葉、黒人もその他の人種も同じ人間であるという価値観を持たなかった当時の白人達は、何を持って自分たちの行動が正しいと思い込んでいたのか。事実、それが正しい事ではなかったが故、人々は権利を求めて立ち上がり、結果勝利を収めた。

 現在のアメリカは人種に対する差別心が緩和されて来たであろうと私は思う。これからのアメリカが、世界がまた同じ過ちを繰り返さないようにする為には、どの様な人種に対しても日頃から個人の勝手なおかしい先見性を抱かず、普通に誰もが一人の人間であるという考え方が当たり前になれば良いと考える。


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