中村(敦志)研究室
       
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2006年度ゼミ論
                               

            アメリカ人の食文化
       ―肥満大国アメリカ―


                          外崎 ひとみ


 ゼミ論では、食文化の面から、アメリカ人の肥満や健康について調べてきた。テーマを選んだきっかけは、実際に食べる量が多いのか、太っている人はどれくらいいるのか、また肥満は体にどのような影響を及ぼしているのか、という単純な興味からだ。
 
 「肥満」と一言でいっても、実際体重だけで判断できるものではない。肥満のレベルを表すときに使われる数値が「BMI(Body Mass Index)値」というもので、これは体重を身長の2乗で割ったときにでる数字のことを言う。日本では25以上を肥満と考えているが、アメリカでは30以上を肥満と判断する。この時点で、日米で肥満に対する価値観が違うことがよくわかる。統一するために今回はBMI値30以上を肥満と考えてみた。アメリカではなんと成人の30.5%が肥満に値するが、日本人の成人はわずか3%である。アメリカ人の肥満人口は日本の10倍ということになる。

 先日、米国飲料協会が2009年までに、公立小中学校での清涼飲料の販売を全面的に停止することを発表した。米国の公立学校には自動販売機も多数置かれ、当然のように好きな飲み物が手に入る環境である。そこで2009年までに、販売するものをミネラルウォーター、果汁100%のジュース、低脂肪牛乳のみに制限すると言うものだ。

 肥満大国アメリカにとって子供の肥満は深刻な問題である。肥満児も1966年の7%だったのが1996年には22%と、約3倍に伸びている。子供のうちに肥満だった人の60〜80%が大人になっても肥満と言うデータもあり、子供の肥満については真剣に考える必要があるようだ。この子供の肥満に関しては、日本でも問題にされている。食べるものが欧米化している上に、運動をする機会が減り、テレビゲームなどに費やす時間が増えていることは主な原因と考えられる。以前は「成人病」と呼ばれていた糖尿病などの病気は、日本でも年々低年化され、「生活習慣病」と呼び方も変わってしまうくらいなのである。

 肥満のイメージが強いアメリカだが、一部とは言え健康志向の人たちもいる。肉や魚など、動物性のものを食べないベジタリアンがその例だ。日本では馴染みのないベジタリアンだが、2000年のデータだとアメリカ人の2.5%がこのベジタリアンである。レストランでは当然のことながら、ファーストフードにもベジタリアン用のメニューが用意されていたりする。だからこそ、ベジタリアンは心地よく生活できるのである。一方でベジタリアンと名乗りながらも、コーラ片手にポテトチップスなど、動物性にものは食べていないというだけで不健康なベジタリアンもいるようなので呆れてしまう。

 このようなことからもわかるように、アメリカ人も自分達の健康に危機感を感じている人達もいるのは確かなようだ。それでも肥満が多いのはやはり彼らが置かれている環境に原因があると考えられる。街を歩けばたくさんのお店、スーパーでも売られているものは特大サイズや砂糖まみれのお菓子。レストランなどで食事をしても出てくるのはボリュームたっぷりのもの。このような環境で「痩せるべきだ!」と言うのは酷なのかもしれない。

 アメリカ人の文化や生活環境から、食文化や肥満について調べてきて、改めて現状の重大さについて考えることができた。決して遠い国の話ではなく、私たち日本人も含めてもっと自分達の健康には自分達で気をつかうべきだと思った。アメリカでは国がお金を出してまで肥満に関する制限をかけている。このような政策がきっかけとなって一人一人が危機感を持ち、自分の食生活を見直すきっかけになって欲しいと思う。
 
 とは言え、「おいしいものを食べたい」、「いろんなものを食べたい」と思う気持ちは悪いことではないはすだ。趣味がお菓子作りやレストラン巡りだというひとも少なくないし、決して太っている人ばかりではない。やはり重要なのは、「健康に気をつかった上で、食を楽しむこと」なのではないかだろうか。アメリカ人は肥満というイメージがなくなるのは、一体いつになるのだろうかと思う。


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