中村(敦志)研究室
       
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2006年度ゼミ論
                               

         日本人の黒人観

                           小河 梨紗


 黒人差別はアメリカだけの問題ではない。私達日本人による黒人への差別もまた、根強く残っている。そこで、黒人とあまり関わる機会のなかった日本人が、なぜ黒人に対して偏見を抱くようになったのか。そして日本における黒人差別にはどのようなものがあるのかという2点について考察してみた。

 日本人は、黒人と接する機会が少ないにも関わらず、黒人に対する先入観や偏見を持っている。大衆文化、特に漫画、マスコミ、文学などの媒体によって、黒人観が日本社会全般に広がっていることが一因だ。マスコミが扱う黒人に関する情報は、偏ったものが多く、歪んだ黒人観を助長している。例えば、代表的なものに『ちびくろサンボ』がある。この物語のサンボという名前は肌の黒い人に対する蔑視の言葉である。そして、サンボの母マンボと父ジャンボをつなげると、米俗語で「ちんぷんかんぷん」という蔑視表現となる。アメリカやヨーロッパでは、1940年に人種差別を助長させる有害書物とされた。しかし日本では40年後の1988年になってようやく絶版となった。当時の日本では読者に何の説明もしないまま絶版になった。日本における人種差別の存在を無視し、この問題を直視していないのである。

 アメリカの大衆文化の輸入に伴い、アメリカの白人がもつ黒人に対する固定観念も日本に入り込み、日本人の黒人観に大きな影響を与えた。このことから、日本人は黒人に対するイメージを作りあげてしまって、イメージと現実を混同させてしまったのではないかと思う。

 日本での黒人差別には、雇用差別や居住差別が挙げられる。英会話学校における講師採用に際しても黒人差別が見られる。新聞や雑誌に載る英会話学校の広告には、必ず白人の顔が登場し、黒人が登場するのは稀である。このような広告に表れる白人優先の仕組みは、職場における黒人雇用差別の現実を反映している。また、不動産業でも黒人に対する差別的対応がよく見られる。外国人、特に非白人種の外国人に、マンションやアパートを貸そうとしない日本の不動産屋が多いそうだ。

 これらのことから、日本における黒人差別もアメリカに劣らずあると考えられる。日本に住んでいる黒人が少ないことから、アメリカほど取り上げられる事は少ないが、多くの差別が今も根強く残っている。アメリカのように、日本も差別行為を犯罪として摘発するくらいの措置が必要である。日本人は、人種差別が白人と非白人との対立に限られていると思いがちだが、日本人自身も加担している問題であるということを認識するべきである。外国での差別の事例だけではなく、日本社会における日本企業などによる黒人差別の現実にも目を向ける必要がある。

 日本人はテレビやマスコミで習ったステレオタイプで黒人を見ている。真の黒人の姿を知ろうともせず、イメージと現実を混同してしまったのである。白人の黒人に対する偏見にあふれた誤報までもが、日本人には真実として受け入れられている。しかし、ステレオタイプによって、ある種の人間に対する考え方が簡単に左右されてしてしまうことを学び、固定観念を取り払い、生身の黒人とどう親しみ、交流するかということが差別問題を解決するための鍵の一つであると思う。一人の努力ではなく、日本全体で黒人の真の姿を知ろうとすることで黒人を差別から解放することができる。差別を理解するには、差別された側の悲惨な歴史を知ることから始まると思う。


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