中村(敦志)研究室
       
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2006年度ゼミ論
                               

       アメリカ人の考え方
     ―家庭の現実と子育て方針―


                           市川 恵理


 私はアメリカに対して、映画やテレビなどから受けたであろう、ある種ありがちなイメージを持っていた。個人が尊重され、子供であっても自分の意見をきちんと述べられる。アットホームで、親子間の仲が良いなど、並べればきりがない。そしてある日、テレビを見た。アメリカの子どものほうが良い環境で育っているように感じ、アメリカでの子育てに強い憧れを抱いた。

 しかし、「アメリカの家族」といって想像するような家庭は本当に多いのか、私の憧れは正しいのか疑問に思った。そこでアメリカの家庭のかたち、彼らの子どもの育て方、それらはどんな考え方や習慣からなのかに的を絞って考えてみた。

 「アメリカは、おもに移民とその子孫たちでできている国であり、才能あるものならだれでも頭角を現せるという信念が国民の骨の髄にまで染みこんでいる」。彼らは未来に関心を寄せ、変化こそが善なりと考え行動する。独立自尊こそが基本徳目で、生まれながらに与えられている権利と考えられている。
 
 社会的地位は本人の努力次第で、分をわきまえろと教えられることはない。そのため彼らは絶えず努力する。アメリカ人は個性を大切にして他人を意識しないように思いがちだが、世間の評判をとても気にする。他人の目を通して認められて初めて成功は意味を持つからだ。

 独立、改善を目指す彼らは、離婚を悪いこととか失敗だとは考えない。結婚してもそれが理想と違うものなら、辛い結婚生活を続けるよりも離婚すべきなのだ。2組に1組が離婚、20代の3人に1人が親の離婚を経験しているという。離婚カップルの平均持続期間は6.3年である。もちろん離婚が子どもに与える影響は考えていて、簡単に離婚しているわけではない。しかし「誰も『死が2人を分かつまで』結婚が続くとは考えていない」。結婚が社会生活や個人の生活に与える影響は弱まっている。

 一般的な家庭もある。しかしアメリカ人の言う「私の家族」とは、核家族をさす。今でも大家族で何世代も同じ町に住むという家はあるが、核家族化が進んでいる。

 アメリカの子育てにおいてとにかく目標は独立すること。独立後はむやみに干渉しない。親のもとを離れたら親の助けは借りない。そして親も独立を保つ。しかし中には就職して親元に戻るケースもある。

 叱る時は長い時間をかけて話し合いをする。決められたことは例外なく厳格。やりたいことはやらせるが、細部に渡って話し合いがなされる。そこで自分の意見をきちんと述べられるよう訓練される。

 自由気ままに(干渉し過ぎないで)育てられるその裏には、自ら考え経験して学んでほしいという思いがある。他方では、甘やかされて要求ばかりで手におえない子どもも珍しくないのは現実である。

 アメリカは、自己主張・自己実現・個人・アイデンティティー・自立がとにかく重んじられる世界(社会)。しかしそのために、喧嘩も辞さない・一人ぼっち・孤独・一体感のなさという顔も持つ。

 育て方には環境が大きく関係している。しかしアメリカで育ったからといって明るくて陽気で自立していて、温かい家庭が築けるわけではない。場所にこだわるのではなく、よいところを吸収していけばいいのではないかと思う。そして、その土地(社会)に合っていることも大切だ。
 
 また、ここに述べた「アメリカ」は白人の中流階層を指している。この人々の価値観や習慣がほぼ普通とされている。しかし先に述べたようにこの国は移民の国・多種多様の国であり、都会と田舎・地域によって多くの例外があることを忘れてはならない。


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