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2006年度ゼミ論

      ハリケーン「カトリーナ」
      における黒人差別


                           眞島 美沙


 2005年8月末にアメリカ南部を直撃したハリケーン「カトリーナ」は、大きな被害をもたらした。その後の被災地の様子を調べていくうちに、黒人差別の実態があることに気づいた。なぜいまだに、黒人と白人の格差が完全に改善されないだろうか。私は、貧困の問題と失業率に焦点をあてて、白人と黒人の黒人差別に対する意識の違いについて考えていきたい。

 ハリケーン・カトリーナの後に、多くの貧しい黒人が、被災地のルイジアナ州に取り残された。閉店しているスーパーで物を盗んだり銃を発砲する黒人の姿が、テレビで流されたり、写真に撮られ新聞に掲載された。そして、黒人は危険というイメージが広がった。略奪行為は許されることではないが、彼らは、食料が届かず生きるために必死だったのである。そして現在は、「ニューオリンズではいま、20万人近くが暮らしているという。被災前の人口は48万人で、67%が黒人だった。しかし、圧倒的多数が黒人住民だった地区が廃虚と化し、黒人は、散り散りになった。比較的被害が軽く、豊かな白人が先に市に戻ってきた。」という状態になってしまった。

 このハリケーン・カトリーナによって犠牲になった人の多くは、避難できなかった高齢者や病人だった。カトリーナ被災前と被災後で比較をすると「カトリーナ被災前と現在のニューオリンズ市の比較(2月末現在、市当局などによる)人口は、カトリーナ被災前48万4千、現在 約19万、ホテルは、カトリーナ被災前265、現在 100、病院は、カトリーナ被災前20、現在12」。このデータから、被災者が一時的に滞在するホテルが不足していただけではなく、病院も半分近く減少していることが分かる。例え、病院で入院できたとしても衛生面や、暑さによる体力の消耗など不安な要素も多い。これらのことを踏まえて被災者の避難場所と病院を確保し、少しでも災害による犠牲者を減らしていく必要がある。

 次に、失業についての問題だが、「現地の報道によると、今回の被害で米南部の計約40万人が職を失った。うちニューオリンズ市の失業者は約29万人。大半が低所得の黒人だ。同市では被災前から黒人の失業率が7.1%に達し、白人の2.5%の3倍近くにのぼっていた。」 このような状態であるにも関わらず、「米会計検査院(GAO)は、14日、昨年のハリケーン「カトリーナ」と「リタ」について、連邦緊急事態管理庁(FEMA)の不適切で不正な援助金支払いが、6億〜14億ドル(690億円〜1610億円)に上るという推計を発表した。」 援助金での不正は被災者の不信感を増大させるだけではなく、援助をした人々(国)の信用も失いかねない。

 このようなことが積み重なって、今回のハリケーンのギャラップやCNNなどの世論調査で「連邦政府のハリケーンの対応が遅かった理由として『被災者の多くが黒人という要因があったと思うか』との問いに『思う』と答えた黒人は60%、白人は12%。」という黒人と白人の意識の違いに結びついたのではないかと思う。

 黒人差別は少しずつ改善されていると考えていたが、まだまだ格差が大きく、実際は改善されたとはいえない。特に、高齢者、病気により避難できなかった人への対応は、ひどいものであった。また、避難できた人であってもその環境は決して恵まれたものではないし、いつ職に就けるかも、いつ戻れるかも不透明な状態である。アメリカ政府は、被災者の大部分が黒人だから対応が遅れたわけではないとしているが、被災地の復興はなかなか進んでいないのが現状である。また、黒人差別の意識調査で白人の黒人差別への「無関心」も浮き彫りになった。全ての白人がそうだとは言い切れないが、この意識を変えていかない限り、黒人問題は解決されることはないと、私は考える。  


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