中村(敦志)研究室
       
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2006年度ゼミ論
 
     
ドラマ「24」に見られる
      9.11テロの影響
 

                                      鎌田 麻美


 日本に住んでいて、手軽にアメリカ文化や習慣を知ることが出来る方法の一つは、テレビで放送される、アメリカのドラマなのではないかと思う。

 ドラマ「24」(Twenty Four)は、NYテロ事件直後の全米に衝撃を与えた。シーズン1のアメリカでの放送は、あの9.11テロ直後の2001年秋。緻密な構成とまるで現実とリンクしているかのようなリアルなストーリー展開。1話が1時間のリアルタイムで進み、24話の24時間、1シーズンで丸1日の設定で話題となった。なぜこれほどまでに「24」は、アメリカで人気を得ることが出来たのか。9.11がアメリカに与えた影響とは何かを論じていきたい。

 国が攻撃されると、国民の愛国心が高まるのは自然なことかもしれない。だが、米国人の場合は、強迫観念が強いためにそれが極端になる。9.11によって米国人は、「強いアメリカ」の自信とプライドを打ち砕かれた。そして、今まで以上に強さにこだわり、心の中の不安と恐怖をごまかして強がるようになった。9.11以降、アメリカ中いたるところに国旗が掲げられ、テレビニュースのバックにも国旗が映り、国旗をはためかせている車がたくさん走った。これは愛国心を象徴し、テロに屈しないというアメリカ国民の団結の証だったのではないかと思う。

 ドラマ「24」の中で、FBI(連邦捜査局)やCIA(中央情報局)、そして軍は、官僚制や保守性に蝕まれた組織として描かれ、ヒーローやヒロインはむしろ孤立した戦いを余儀なくされる。アメリカも、世界の中で孤立した戦いを余儀なくされているような印象を受ける。だからこそ国民同士の団結が強いのではないだろうか。

 「ヒーロー」という言葉の持つ意味も大きく変わった。アメリカのヒーローといえば、圧倒的な力で勝利をもたらす者、例外はあってもそのイメージは不変だった。しかし、ヒーロー像は事件を契機に大きく変わった。9.11テロ当日の朝に、署員の拍手を浴びながら定年退職の辞令を交付された消防士が、サイレンと共に貿易センターに駆けつけ、そのまま帰らぬ人となった話は伝説になった。生存者の多くは、自分達が非常階段を駆け下りる中を、逆に駆け上がって行った消防士たちの事を思うと、涙が溢れてくると言う。ハイジャック機の中で自分の危険を省みずに犯人と格闘に及んだ乗客の名前は、何度も新聞に出た。

  9.11はアメリカ人の愛国心を増大させ、価値観やヒーロー像を変えた。恐怖や不安を隠すかのようにテロに立ち向かって行く「24」の主人公ジャックは、そのヒーロー像を備えていた。ジャックは不安や恐怖のもとを壊してくれるヒーローなのだ。組織の中にいながらも、縛られること無く行動する姿。それは、テロリスト達に悠然と立ち向かう姿であり、家族や愛する者そして国を必死で守ろうとする姿であった。シーズン2では、自分の身を投げ出しても、街を核爆弾から守ろうとした。シーズン3では、ウィルス・テロを阻止する為に、自分が犯罪者になる覚悟で挑む姿があった。

 9.11直後の新たなヒーローを、ドラマの中のジャックが引き受けていたのではないかと思う。そして、フィクションとはいえ、現実社会そのものを浮き彫りにしたストーリーであったことが人気を得た要因だと考える。9.11はアメリカ人の本質的なものを変え、団結を強くした。そこに当てはまる「24」というドラマが入ってきたのだと思う。

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