中村(敦)研究室
       
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         アメリカ人夫婦と変わりゆく家族

                                         川原 さやか


 アメリカ人夫婦を想像した時、どんな姿を思い浮かべるだろうか。洋画のコメディやラブストーリーの中で、アメリカ人夫婦の幸せそうな姿を見ると、憧れを抱き、幸せな気分になれる。ハッピーエンドを見届けると幸福感で満たされる。だが、そこに行き着くまでには、必ず浮気やすれ違い等、離婚の危機に陥るシーンを経るのである。映画ではハッピーエンドで終わるのだが、現実のアメリカはどうなのだろうか。現実では、結婚をしたアメリカ人夫婦がその後どうなるのか。どのような展開になっていったのか。その背景には何があったのか。資料を参考に考察してみる。
 
 アメリカでは2組に1組が離婚すると言われており、年間の離婚件数は120万件と世界でもトップクラスである。1960年代に入り、今までアメリカ社会において参加する権利を持つことが許されていなかった女性たちが、続々と社会進出を果たしていく。70年代には非婚や離婚は自立した女性の象徴となった。しかし、80年代後半になると、キャリアよりもパートナーや子供たちとの関係も大切にしたいという考え方が生まれた。実際にアメリカの統計から、離婚件数が最もピークに達した年が1979年〜1981年で、それ以降の離婚件数は減少傾向にあることが確認できた。しかし、2007年時点で人口1000人に対して3.6人という離婚率はまだまだ世界トップクラスと言えるだろう。
 
 なぜここまで離婚率が高くなったのだろうか。アメリカでは結婚すれば一生、安泰という訳ではないのだ。相手に対する愛情が持てなくなり、家庭が癒しの場で無くなると人々は離婚するのである。自分にとって最も幸せな人生を追求し続けると言える。個人単位の思考、民主主義精神、国民性が大きく影響していると言えるのではないだろうか。

 次に、宗教信仰が私生活に及ぼす影響の弱まりという観点から考察する。カトリック教の離婚について調べたところ、婚姻の秘蹟(ひせき)によって結びつけられた男女の関係は解消できないとされている。しかし実際は「婚姻無効宣言」と呼ばれるものが、年間約5万件認められている。次に「無責離婚法」の制定である。アメリカでは、1970年に制定され、相手に“落ち度”がなくても、一方の意思で離婚が成立するようになった。あるいは少なくとも1年間ほど別居すれば、離婚が成立する州がほとんどであり、1970年以降、一気に離婚率が上がったとされている。
 
 次に「ステップ・ファミリー」について述べる。これは、「一対の男女が共に暮らしていて、少なくともそのどちらか一方に、前の結婚でも設けた子供がいる家族」のことを言う。離婚と再婚を繰り返す現状により、血縁関係のないステップ・ファミリーも急増している。現在、ステップ・ファミリーの割合は、夫婦の二組に一組が離婚し、そのうちの70%が3年以内に再婚しているため、18歳以下の子供の40%はステップ・ファミリーの中で暮らしていると言われている。
 
 アメリカ人の多くの人が結婚をしたいと望み結婚するが、その結婚生活は平均わずか11年間で幕を閉じてしまう。そこには国民性が大きく影響しており、夫婦間の結婚生活においても個人単位の思考が優先されてしまう。また、宗教の存在が弱くなったことや、離婚を取り締まる法律が緩くなったことが離婚率を増加させてしまった要因の一つとして考えられる。しかしながら、現在ではピーク時の離婚率より減少傾向にあるということも事実としてあるため、国が結婚生活の維持、離婚の危機に陥った夫婦をサポートする機関を充実させていくことで、まだまだ改善の余地はあると考える。
 
 また、生殖産業の急速な発達に加えて、離婚率そして再婚率の増加に伴い、ステップ・ファミリーがアメリカの家族の大半を占めるようになってきている。再婚を2度3度と繰り返すことにより、家族の血縁関係・家族関係はさらに複雑になると言えるであろう。両親の保護下にある子供たちの心理的混乱も念頭に置き、ステップ・ファミリーの利点を伸ばしていくことが、今後のアメリカをさらに自由で充実感溢れる国と成長させていくであろうと私は考える。



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