中村(敦)研究室
       
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       ファーストフードを通して考える食文化

                                        吉田 耕平



 街を歩いていてふと辺りを見まわすと目につく看板の数々。マクドナルド、モスバーガー、すき家、なか卯、ピザハット、ほっともっと等々。ここ近年、外食産業の発展は凄まじいものがある。これらのお店に共通する点はそれなりに味がよく、安く、メニューが豊富、なにより早い。いまや日常生活の一部として欠かせない存在となったファーストフード。この外食産業は、果たしてどのように我々日本人独自の文化に入り込み、根づいたのか。そして本国アメリカにおけるファーストフードの存在、問題についても見ていこうと思う。

 現在日本におけるハンバーガーチェーン店は、誰もが知っている「マクドナルド」、「モスバーガー」、「ロッテリア」等、20種類を超える。おおよそのシェア率は日本マクドナルド6割、モスバーガー2割、ロッテリア1割、その他となっている。マクドナルドがこの業界で断トツの独り勝ち状態なのは、日本に登場して以来全く変わっていない。日本に初めてマクドナルドがやってきたのは1971年7月20日のことである。それからわずか40年もの間に一気に日常生活に浸透していった。2000年の統計によると日本でのマクドナルド・ハンバーガーの総販売個数は12億4700万個。国民一人当たりに換算すると約9.8個という数字になる。マクドナルドがアメリカを飛び出し、急成長を遂げたのはここ日本だけの話ではない。世界的にみても、1991年に存在したアメリカ国外のマクドナルド店舗数は4000店ほどであった。しかし現在(2007年時点)での記録によると、世界120カ国に展開され、約1万8000店舗に急拡大されている。

 なぜマクドナルドは、ここまで成長を遂げたのか。まず圧倒的な低価格。GPS (Global Purchasing System ) により、原材料をどこの国のどこの市場が安いのか検索し、リアルタイムで世界114カ国から購入出来る。世界中至るところにネットワークがある企業だからこそ成せる業である。次に、商品自体の魅力である。マクドナルドの商品は、万人が食べてもおいしいと感じるような味付けが研究されている。特に重要なのが匂いである。人間の舌は数十種類の味を感じ取ることができるのに対し、鼻は数千種類もの匂いを嗅ぎとれる。マクドナルド商品の匂いは、化学工場で研究、開発されているのである。そして宣伝戦略である。世界的に有名なワールドカップ等のスポーツ大会に、積極的にマクドナルドはスポンサーとして協賛している。またCMでは笑顔の子どもたちが多く登場し、誰もが知るような人気キャラクターであるドナルド・マクドナルドもいる。見ただけで直ぐにマクドナルドと分かるようなイメージ戦略を成功させているのである。

 しかしファーストフードが日常生活に溶け込む一方、既存の食文化が変化し、「肥満」といった生活習慣病が一気に増加した。肥満は単純に体型だけの問題でなく、心臓病や癌、喘息、高血圧、脳卒中といった病気を引き起こす原因となりうる。アメリカでは1年間で肥満が原因で死亡する人の数は、交通事故死する人の数の二倍もいるのである。国民の3分の1以上が肥満というアメリカでは、もはや深刻な流行病となっている。アメリカでのファーストフードの浸透度合いは、毎日14人に1人がマクドナルドで食事をし、毎月子ども10人中9人がマクドナルドを訪れることから、食文化の一つとして根付いているのである。

 アメリカで生まれたファーストフードは、食文化を変えた。それと比例して新たなる健康問題も生まれた。今や日常生活に溶け込むほどになったファーストフードが、仮に生活から消えたとすると、逆にあまりにもたくさんの食品がなくなることは確実だ。長い年月をかけて変化してきた食文化を再び変化させるには、長い期間が必要である。私たちは先人たちの健康的な食生活を学び直し、新しい食文化であるファーストフードとの付き合い方を考えていく必要がある。生きることと食は絶対に切り離せないのだから。



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