中村(敦)研究室
       
◆ホーム
ゼミナール
授業の紹介
英語の学習
◆アメリカの文学
◆リンク
過去のお知らせ
ホーム ◆ゼミナール     ◆ゼミ論
                アメリカで変化する日本食
 
                                       長谷川 絵梨
 

 今日、アメリカでもたくさんの日本食レストランを見ることができる。2006年時点で北米に10,000店舗もの日本食レストランがあることからも分かるように、アメリカ人にとって日本食は、なじみの味になりつつあるのではないだろうか。しかし、アメリカ人が好んで食べている日本食は、私たち日本人が食べている味と、少し異なるのではないかという点に気が付き、その差について、2つの食べ物を例にとり、考察してみる。

 まず1つめは、テリヤキ。今やテリヤキは、アメリカの食卓にも登場し、代表的な日本料理の1つである。アメリカと日本でのテリヤキの違いとして、アメリカでは、洋酒、ニンニク、ゴマなどといった調味料が加えられることがある。醤油と砂糖以外に、日米のテリヤキソースに共通点はないといってもおかしくない。日本人の感覚からするとアメリカのテリヤキは甘く、さらに余計な調味料などが入っていたりするため、日本と同じものだとは言い難い。それは、甘いもの好きなアメリカ人の味覚に合わせて、作られたと考えることもできる。味が違うため、「照り焼き」と“teriyaki”は違うものだと考えるケースもあるという。

 次に、寿司を例にとってみる。アメリカ人にとって馴染みの少なかった生魚を使った寿司が、なじみ深い肉を使ったすき焼きや鉄板焼きより、アメリカでここまで人気が出た背景にはなにがあるのか。その理由は3つある。

 まず1つめに、おいしいカリフォルニア米「国宝ローズ」の登場である。以前使われていたカルロース米は冷えるとポロポロになってしまい、寿司には不向きであった。寿司レストランにとって、良い米の確保が大きな課題であったのだが、「国宝ローズ」の登場によってその悩みが解決したのである。2つめに、「日本の技術力の世界的評価」である。アメリカの信頼を、高い技術で少しずつ得ていった。アメリカ人は、不気味だと思っていた生の魚をおいしく食べる日本人の技術力に感心したのではないだろうか。3つめに、健康ブーム。1977年、アメリカで「マクガバン・リポート」とも呼ばれる健康に関するリポートが発表され、アメリカ人が健康を意識し始めた結果、魚を使う寿司がクローズアップされていった。この3つの事柄が大きく関係したことで、アメリカでの寿司ブームがおきたと考えられる。

 そしてさらに、アメリカでも人気の寿司が、日本の寿司と異なる部分を考えみたい。アメリカ人が寿司と聞いてまず思い浮かべる “カリフォルニアロール”。日本の一般的な寿司とは、大きく異なる。まず具材は主に、アボカド、キュウリ、カニかま等を巻いて作る。さらに大きな特徴として、海苔(のり)ではなく寿司飯が表面に見える、裏巻きになっている。それは、海苔に抵抗があるアメリカ人を配慮したためであり、白ゴマ、トビッコなどをまぶし、彩りをつける。このように、具材も見た目も、日本の寿司とは大きく異なるカリフォルニアロールが、アメリカで人気となり、その結果、アメリカ人と寿司を近づけるきっかけとなったのである。

 また、巻物以外に関しても、特徴がある。アメリカ人はどんな寿司ネタを好んで食べるのだろうか。マグロ、サーモン、エビは、アメリカ人も普段から食べる機会があるため人気がある。他にも馴染みがないはずのハマチやウナギが挙げられる。脂っこく、こってりとした味覚がアメリカ人に受けたのではないか。ヘルシー志向でありながらも、脂の乗った魚を好んで食べるあたりは、やはりアメリカ的な味覚も持ち合わせていると感じた。

 今回例にとった、テリヤキ、寿司からも分かるように、日本の食べ物がアメリカでアメリカ人の好みに変化して、徐々に浸透している。日米の味を受け入れ、お互いの嗜好に合わせ変化しながら、アメリカで生まれ育った日本食が、今、静かなブームとなっている。これからも日本食が、日本とアメリカを結ぶきっかけになってくれることを願っている。



 トップ アイコントップページへもどる