中村(敦)研究室
       
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     アメリカの「寿司」ブーム
                               
                                           干場 美幸


 現在、“SUSHI”は世界共通語になりつつある。アメリカでは実際に食べたことがあるないは関係なしに、国民の半数以上がこの言葉を知っていると思ってもいいだろう。ヘルシーであるという以上にSUSHIレストランへ行くということがおしゃれでカッコイイとされる。デートでかっこよく決めたければ彼女を誘う。カウンターを挟んで職人と対面して注文するという形式の面白さや、客と店員がコミュニケーションをとれることで人気がある。アメリカのみならずヨーロッパでも“SUSHI”と“SAMURAI”は、40、50年前の“GEISHA”、“FUJIYAMA”に代わる日本の代名詞である。1960年代に寿司ブームが始まり、それ以来寿司は日本以上にアメリカで愛されるほど、日常生活に溶け込んでいる。彼らにとって馴染みのない縁遠かったはずの寿司。なぜ生魚を使った寿司が、アメリカでこれほどブームとなったのだろうか。

 大きなきっかけとなったのが健康ブームである。とにかく肥満が多いアメリカ。肉食のため筋肉が発達しているためでもあるが、ハンバーガー、ケーキ、クッキー、アイスクリームなどを常食し、コーラを飲んでいれば明日にでもそうなるだろう。そこで1977年に発表されたアメリカ上院「栄養問題特別委員会」によるリポートで、成人病がクローズアップされてから、コレステロールを気にしだし、どの国の食生活が健康に良いのか調べ始めた。そこで注目されたのが当時の日本食であった。日本では極端に肥満している人は見られず、平均寿命が世界一。穀物と野菜と豆を土台にし、魚で良質なたんぱく質をとり、低脂肪・低コレステロールといったことから「日本食=ヘルシー」といったイメージが定着し、人々の魚色に対する関心が高まった。これがブームの追い風のひとつになった。しかし、アメリカ人に好まれて食べられる寿司のほとんどは、握り寿司ではなく巻き寿司である。生魚がダイレクトに見えることや、海苔を気持ち悪がるのを配慮し、巻き寿司、それも裏巻きで作ったものが人気。その火付け役となったのが「カリフォルニア・ロール」であり、爆発的な人気を得た。ほかにもスパイダー・ロール、フィラデルフィア・ロール、アラスカ・ロールなど現地の特徴を活かしたものが多い。彼らが考えたユニークな寿司は、彼らが手にしやすいように工夫されたものばかりである。寿司は健康食として広まっていったが、油で揚げたものを巻いてあるなど、今では本当の健康食とは相反するものが多く作られ好まれているのも事実である。

 生魚というだけでゲテモノ扱いされていたものがちょっとしたきっかけで好まれるようになり、受け入れられ変化した寿司は、常に新しいものを追い続け変化するアメリカでだからこそ、ここまでグローバルになったのだろう。今では、スーパーマーケットのテイクアウト寿司も人気があり、かつては一部の金持ちだけに受け入れられていた寿司が、好景気のおかげで一般人にも手が出せるようにもなったことも追い風のひとつになった。だがなによりも日本人にはないような彼らの柔軟な発想があったからこそ寿司はアメリカでブームとなったのだろう。



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