中村(敦)研究室
       
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               アメリカの禁煙事情

                                         長澤 侑加


 以前、1930年代にタバコ大国と言われていたアメリカだが、近年喫煙者が大幅に減ってきている。喫煙者が減ってきているのはなぜだろうか。タバコ大国とまで言われていたアメリカが今日、嫌煙大国と呼ばれるようになったのはなぜだろうか。徐々にではあるが、喫煙者が減ってきている日本は、アメリカとどのような規制の差があるのだろうか。

 もともとアメリカ人の使用方法としては噛むものや嗅ぐもの(無煙たばこ)が多く、1900年の時点で最も人気があったのは噛みタバコだった。初期にはタバコが嫌な物、周りから批判されるような物ではなかった。タバコは嗜好品としてだけではなく、解毒剤など、医薬としても広く認められていたようだ。この頃にはタバコに対して不快感をいだく人や反対する人などはまだいなかった。しかし紙巻きタバコの消費量が増え始めた19世紀末になると、タバコ規制を求める声がおおきくなった。その理由として、まず、消費拡大したことにより紙巻きタバコの紫煙が周囲に不快感を与えたこと。そして、喫煙は肺ガンによる死亡率が極端に高くなるという研究結果が、1964年にアメリカで初めて明らかにされたことが大きな原因となっている。

 その後、アメリカでは禁煙強化に向けて警告表示と広告の禁止、分煙・喫煙の推進、課税強化などを行ってきている。喫煙者に最も被害を与えているのは、分煙・喫煙の推進だと考える。1986年にエヴェリット・クープ医務総監が、「他の喫煙者の煙を吸わされるという受動喫煙も健康被害をもたらす」と警告したことにより、公共の場所や職場での完全分煙もしくは禁煙を求めるようになった。これにより、連邦議会は1998年に飛行時間が2時間以内の飛行機を禁煙にし、2年後には6時間以内の全ての国内線旅客機を全面禁煙とした。連邦政府関係の建物内での喫煙も1987年から制限され始めた。州および自治体レベルでも、1990年代初頭までには、地方政府の建物、鉄道やバスなどの交通機関、映画館、病院、スポーツ施設などの公共の場所での禁煙を実施するところが大半になった。また、飲食店での禁煙も進んでおり、ニューヨーク市では2003年に酒場も禁煙対象にした条例が施行されるなど、喫煙できる空間は、ますます狭められている。近年では健康保険料が割高の喫煙者を雇用しない企業も増えてきている。こんなにもあちらこちらで禁煙場所が増えていくと喫煙者の肩身は狭くなり、限られた喫煙スペースでまたは自宅でしかタバコを吸うことができなくなってきているのではないだろうか。

 次に日本の禁煙事情と比較してみた。アメリカでも州によってはタバコの値段が異なるのだが、例えば、ニューヨーク市ではマルボロが1箱10ドル(約900円)である。それに比べて、日本では現在320円で、今年の10月には410円に値上がりするとは言え、日米の課税の違いがよくわかる。それに加え、アメリカでは1990年代には自動販売機の禁止を行っているのに対して、日本では2008年にようやくtaspoが導入された。このように、課税や自動販売機の規制から見ても、日本の禁煙事情はアメリカよりだいぶ遅れをとっているように思われる。

 アメリカでは1964年の喫煙と健康に関する報告書が出されたことをきっかけに、警告表示、広告禁止、分煙・禁煙などの推進、課税強化など反タバコ団体や政府などがタバコ規制を強化してきている。この為、現在のアメリカでの喫煙者は徐々に減ってきている。喫煙がどれほど自分や自分以外の人の健康に被害を与えるのかを知り、タバコを吸える場所、喫煙所が限られてきて、タバコの料金も上がる。喫煙の規制について調べていて、ここまで喫煙できる場所が限られ、喫煙者が住みにくい環境になれば禁煙する人も増えてきているのが当たり前だろう。逆にこのような環境でも吸い続ける人は余程のニコチン依存症なのではないだろうか。アメリカは禁煙先進国と呼ばれるほどで、禁煙事情から見た日本はアメリカより何十年も遅れている事が分かった。アメリカは、日本が将来行うべきことを一足先に取組んでいると言えるだろう。



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