中村(敦)研究室
       
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             日本にやってきた“ジーンズ”

                                        大泉 万梨恵


 現在、世界中で男女問わずほとんど持っていると言っても過言ではないジーンズ。日本でもあたりを見回せばジーンズを穿いている人はどこでも見受けられる。もともと和服を着ていた我々日本人でさえ、今ではジーンズを穿くことに抵抗や違和感はない。このジーンズがどのようなきっかけで生み出されたのか、どのような工夫が施されてきたものなのか、なぜこんなにも人々に愛されているのか、ジーンズの成長に触れながらアメリカだけではなく日本人に認められていく理由を探ってみた。

 ジーンズは今から140年前のアメリカで、ヤコブ・デイヴィスの手によって生み出された。この時代は1848年に起こったゴールドラッシュの影響で、新しく金が発掘された地へ金脈を探し出し富や名声を得たいと願う採掘者がカリフォルニアに殺到した。当時のアメリカの労働者たちは「動きやすくて丈夫なズボン」を求めていた。そんなニーズに応えるためにヤコブ・デイヴィスはサンフランシスコの織物商人であったリーバイ・ストラウスから白い丈夫な綿帆布を仕入れて、それにリヴェットを打ち付けたものを作り出した。その出来事をきっかけにジーンズは時代の流れに合わせて、さまざまな変化を遂げた。もはやジーンズはジーンズという枠組みを飛び越えたのであった。

 次にそんなジーンズが本格的に日本に来日したのは戦後の混乱が続く1950年代の初めの出来事。この当時アメリカから輸入されてきた物資の一部である中古衣料品の中にブルージーンズが混ざって日本に届けられた。これは慢性的な物不足に悩まされていた日本人の中で爆発的な人気となった。日本人が古来より守ってきた「藍染」や「絣」(かすり)といった伝統文化と通ずるところが多かったのも理由の一つだ。このアメリカからやってきたジーンズに日本独自の工夫やアイデアを加えることでさらに日本で発展させていった。日本で有名なジーンズ大手メーカーだけで約5社存在する。各々の会社は古くからのデザインを守ることはもちろん、女性のためのジーンズを提案した。これまで女性がズボンを穿くという概念はなかったが、メーカーたちは挙(こぞ)って女性らしい美しいラインを最大限に発揮することができるジーンズを生み出した。アメリカで売っているジーンズをそのまま売っても日本人の需要はほとんどないに等しい。日本とアメリカではそれぞれ求められているニーズが違うのは当然のことだ。ジーンズはさまざまな「色」に代わる必要があった。そして現在日本で最もシェアを誇っているのがUNIQLO。このUNIQLOは商品にしっかりとした素材を使い、デザイン性も豊富で、複雑な加工が施されているのにも関わらず、かなりの低価格で販売することを実現している。

 またジーンズが新たな常識として確立してきた。これまでジーンズは労働着という存在から普段着へとシフトチェンジして親しまれてきたが、そのジーンズが仕事着として許されつつある。会社に制服があるかないかにもよるが、現在のOLのカジュアル化が進行したと言えるのではないだろうか。これは職場だけの話に限らず、高級ホテルまたはレストランにも言えることで約10年前にニューヨークやパリの歴史あるホテルがジーンズでの入場を認めたことが話題になった。この出来事のきっかけとしては高級ブランドがジーンズを扱った商品展開をするようになったからである。もはやジーンズ=オフスタイルという発想は古いのだ。

 アメリカで誕生したジーンズはアメリカの労働者の汗を吸いこみ、一緒に働いた後、さまざまなデザインや工夫を施され、海を渡りいろんな人種に愛され、新しい命を吹き込まれて現在まで来た。一般的にジーンズと呼ばれているものはパンツスタイルだが、それだけではない。次々と起こる流行に対応していくには新しいニーズに答えていくことが重要なポイントとなる。ジーンズはこれからも進化し続けるとともに私たちの日常に身近な存在として在り続けてくれるであろう。

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