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2005ゼミ論

愛国心の落とし穴

鈴木 元子


 超大国アメリカ合衆国。この国に生まれ育った人々は、建国以来どのように自国を愛してきたのだろうか。「9.11テロ」をきっかけに世界情勢は変わり続けている。その中にあって、アメリカ国民の何が変わり、何が変わらなかったのか。これらを念頭に置きながら、アメリカ国民が持つ愛国心の落とし穴について考えてみたい。

 まず、最初に踏まえておきたいのは、愛国心の定義である。愛国とは自分の国を愛する事。すなわち愛国心とは、自分の国を愛する心である。アメリカでは小学生から、毎朝学校で国旗掲揚と国家忠誠の言葉を暗唱している。“Pledge of Allegiance”(忠誠の誓い)と呼ばれる国家忠誠の言葉は、法的に強制する事は出来ないが、50州のうち、半分の州の公立学校で奨励されている。強制させることは出来ないとはいえ、校長をはじめ、全職員、クラスメート全員が行っていれば、自分もやらなくてはいけないと思うだろう。アメリカ国民の愛国心はこのように育てられているのだ。「アメリカ至上主義に育ったアメリカ国民の世界観とはアメリカ観」(円道123)なのである。

 ベトナム戦争の帰還兵たちによって組織される“Veterans for Peace”の人々は、「戦場を見てきた我々の経験から、戦争は始めるのは簡単だが容易に阻止することは出来ない。そして、その犠牲はいつも罪のない人であることを知っている。と、軍服を脱ぎ捨て、非暴力を理念に活動している」(円道 174)。様々な経験から学び、そして今、また怒涛の世界に存在するアメリカ国民の中には、確かに国家を愛し、同時に世界を愛する人々が増えてきているのだ。しかし、反戦デモを行う国民もいれば、その反戦デモを行う人々を非国民と罵倒する国民もいる。今でも国政に賛同する国民がいる事も忘れてはいけない。そして、アメリカ人であることに誇りを持ち、満足している人々も多くいる。今回の大統領選挙の投票率は驚くことに46,6%なのである。そう、アメリカ国民の半数以上は国政に無関心なのだ。

 2001年の9.11テロ事件で、アメリカ国民はパールハーバー以来の本国への攻撃を受けた。それはアメリカ国民に大きな衝撃と悲しみを与えた。当初、その衝撃と悲しみ、又怒りの矛先はアフガンやイラクへ向かった。しかし事件から約4年の歳月が流れて、アメリカ国民のなかには、自国の行っている事にわずかながら疑問を感じ始めている人たちがいる。それが今回のアメリカ大統領選挙によって浮き彫りにされた。しかしアメリカ国民は自国を世界で唯一の超大国と認識しているのにも関わらず、半数は自国の政治に無関心なのである。私はアメリカ国民の多くは傲慢な愛国心を持っていると考える。一概にアメリカ国民を傲慢だとは決め付ける事は出来ない。中には進歩的なアメリカ国民もいる。そして国家に忠誠を誓う国民もいる。しかし、今一度、アメリカ国民は自国の歴史を、自国の行いを、そして事実だけではなく真実にも目を当てるべきではないのだろうか。本当の愛国心とは一体何なのかをもう一度考えるべきであろう。私は国民の多くが傲慢な愛国心を持って生きていけば、アメリカ合衆国が世界から孤立することは、そう遠くはない未来のことだと思う。
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