中村(敦)研究室
       
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2005ゼミ論
             
多様化するアメリカン・ファミリー

倉本 真由美


 私は、様々に変化するアメリカの家族事情に注目した。1950年代までは、稼ぎ手の夫、専業主婦の妻、両親と血の繋がりのある子供達という家族形態が典型的だったが、今ではすっかり少数派となった。なぜなら、アメリカ人が求める家族の在り方の選択肢が増えたからだ。その背景には、海外からの養子、卵子・精子提供や代理母等、養子制度や生殖技術などがある。しかし、血の繋がりがなく、生活習慣や価値観が違う人種同士が、どのようにして家族の絆を深めていったのか。この疑問点について、同性愛者、シングルを中心とする家族から自分なりの答えを導いた。

 最初に、生殖産業から生み出された子供のいる「DI家庭」について取り上げた。夫以外の精子を排卵のタイミングに合わせて妻の子宮に送り込む“DI”(donor insemination)という方法で子供を授かることができる。生まれてくる子供は母親とは血の繋がりがあるが、父親とは無い。父親は妊娠と出産に関わらないため、無力感を覚える。代理母出産だと、母親も妊娠を体験できない事を残念に思う。またDIで生まれてきた子供自身も両親との距離を感じてしまう。それでもお互いの距離を少しでも縮めようとして、最近では事前にカウンセリングを行い、平穏な家庭を築き上げようと努力している。また全く両親と血統の違う「養子縁組」という形から家族を築く人々もいる。ここにも子供が精神的ショックを抱えている為、なつかない等の問題点がある。

 そして私がアメリカの家族事情に取り組む際、最も焦点を置いたのが「同性愛者」の家族構成についてである。ゲイ解放運動と性の解放によって、全米に広がったエイズをもたらしたと誤解を受けて、同性愛者は肩身の狭い思いをした。しかし意外にもこのエイズが同性愛者と子供とをひき合わせた。子供達が産まれてきてすぐにエイズやクラック(麻薬)に侵されていると分かると、同性愛者達が彼らの親になり、初めて家族という空間が作られた。現在では殆どの子供達が異性同士の結婚から生まれ、離婚後にカミング・アウトした親と住んでいるという現状なので、(同性愛者の)親のどちらかとは血縁関係がある。子供達自身は、大人が理解できない本人だけの悩みを抱えている。しかし学校や公共の場では自分の意見をはっきりと発言でき、適応力があると見なされている。もちろんプラス面だけではないが、社会でこのような結果が少しでも得られたのは、子供達を含め同性愛者の親達の協力や、昔とは違うアメリカの人々の意識の変化があるからではないかと思う。

 最後に、(片親だけの)シングル家族を取り上げた。現在では様々な理由から、シングルの立場で子供を育てる親達がいる。男女の収入の差から来る金銭的問題、労働の為に確保できない子供との時間等、家庭毎に悩みがある。けれどシングルの家族形態も含め、アメリカ文化を「家族」という視点から考察した結果、各々の家族は決して自分達だけが特殊だと感じていない。日々変化するアメリカ社会の中でどうすれば自分達が幸せに暮らせるか。そう考えた時に見えてくるそれぞれの役割をしっかりとこなし、家族の絆を深めているのだと思う。仮にその方向性がずれて社会に反した行動をとってしまうことがあったとしても、きっと自分自身の幸せを願っての行動であるに違いない。そのように、アメリカの人々が抱く家族に対する考え方が理解できるようになった。

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