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卒論2005


              アメリカのバイリンガル教育
           ―ヒスパニックに対する英語教育について―

                                      諏佐 奈緒美

                   (目 次)
序論
第1章 定義
       (1)バイリンガルの定義
       (2)ヒスパニックの定義
第2章 バイリンガル教育の歴史とヒスパニックの関わり
       《バイリンガル教育以前》
       《初期のバイリンガル教育》
       《バイリンガル教育法の成立》
       《バイリンガル教育に影響を及ぼした訴訟》
       《支持を失うバイリンガル教育》
       《バイリンガル教育の維持と英語公用化運動》
       《強まる逆風》・
第3章 ヒスパニックに対するバイリンガル教育
       (1)急増する移民
       (2)英語を母語としない子どもの数と分類
        《プロポジション227施行後のシステム》
第4章 バイリンガル教育VS英語公用化運動
       (1)USイングリッシュの実態
         《USイングリッシュの誕生》
         《USイングリッシュの裏と現実》
       (2)強まる逆風に立ち向かうバイリンガル教育
         《英語を母語に持たない子どもへの教科指導》
         《内容ベースの教授法導入》
結論
参考文献
 

 近年のアメリカ合衆国では移民が著しく増えている。その中でも、特にヒスパニック移民が年々増え、1980年と1990年の国勢調査を比べると、10年間で50%を越す伸び率である。 ヒスパニックとはスペイン語を話す民族のことであり、特徴としては出生率が極めて高いことである。そのため、2080年にはヒスパニック人口は1億4千万人に達し、黒人を抜いてアメリカ最大のマイノリティになる、との予測が立てられている程である。

 これ程までに、ヒスパニック(他民族も)が増えると、さまざまな問題が出てくる。そこで私は移民に対する言語教育はどのようにされているのか疑問を持ち、ヒスパニックに焦点を当てアメリカのバイリンガル教育について勉強しようと思った。なぜヒスパニックに言語教育が必要なのかと言えば、急激な人口増加、高い出生率が原因であると考えられる。出生率が高いということは子どもや若者の人口が多いこととなり、教育を受けるべき人口の数が多いのである。さらに、ヒスパニックの多くは英語を話せずに移民してくるのだ。               

 1960年代初頭に「教育も一つの権利」とヒスパニックの教育問題が注目され始めた。1968年には「バイリンガル教育法」が施行され、公立学校などで正式なバイリンガル教育が開始された。

 しかし、急激な移民の増加により、アメリカは本来あるアメリカ社会がヒスパニックや他民族で溢れ、彼らによってこれからのアメリカ社会が形成されていくのではないかと恐れた。この意識が次第に強まり、移民に対する教育の見直しがされ、連邦政府はスペイン語から英語への「移行」を目標とした。このことがヒスパニック側の考えと異なり、今後の「バイリンガル論争」の大きな原因の一つとなった。

 1970年代後半からアファーマティブ・アクションへの非難、80年代の勢いが止まらないヒスパニックの急増などで、バイリンガル教育はヒスパニックの社会的、政治的、経済的野心を実現するための戦略であるとの考えが一般化し、徐々にバイリンガル教育の支持が薄れていった。

 さらに、英語公用化運動という英語をアメリカの公用語にしようという団体も作られ、1998年最も移民が多いカリフォルニア州でバイリンガル教育は廃止された。 しかし、実際の教育現場ではバイリンガル教育をなくすことはできなかった。それだけ移民の子どもが多く、英語だけでの授業をしても学力は低下し、退学していく子どもが耐えない状況だったからだ。

 英語を母語としない子どもには特別な教育方法、ESL(English for second Language)があり、スペイン語を交えながら英語を第二言語として勉強する方法である。ヒスパニックは今後も増え続けることは可能性として非常に高い。したがって、アメリカに与える影響は大きく、アメリカ社会を変化させる力を彼らは持っていると思う。多民族国家としてヒスパニックを恐れずに、両者が歩みより、子どもたちのためにより良いバイリンガル教育をしてもらいたいものである。

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