中村(敦)研究室
       
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ウッドストック・フェスティバルは
なぜ伝説となっているのか

 

小中 祥子

私は今までに1960年代アメリカの音楽や若者文化、そしてこれらと社会との結びつきについて調べてきた。60年代アメリカ社会では反戦運動が高まり、マイノリティ集団が自由と平等を求める運動を展開して、様々な主張が社会を飛び交っていた。音楽では、この運動に共感したアーティストがこれらの主張を曲にして歌い、若者はその音楽を好んで聴いた。これは主に60年代前半の流れで、半ば頃からヒッピーがアメリカ社会に登場し始め、ヒッピーもヒッピーでない若者も、大人には理解できない若者だけの世界を確立していった。

これらを調べていく上で、私はいつも“ウッドストック・フェスティバル”というものにぶつかっていた。 「若者たちのパワーを示すものであり、音楽という枠を超えた社会現象」と言われる音楽祭。まさに60年代を象徴するにふさわしい祭典であるようだが、そもそもこれはただの野外ライブではないのか。「愛と平和」をテーマとしながらまるで地獄のようではないか。何が50万人もの若者を惹きつけたのか。そして、今となってはウッドストック・フェスティバルが「伝説」になっているとか「神話化」されているとか言われている。だが、なにがそのように言わせているのか。私はこの時代について調べていてウッドストック・フェスティバルのことを目にするうちに、このような疑問を持つようになっていた。

ウッドストック・フェスティバルとは、ウッドストック・ミュージック&アート・フェアのことで、1969年8月15(金)、16(土)、 17(日)日の3日間に渡って行われた音楽祭である。ニューヨーク州ウッドストックで行う予定で企画されたこのフェスティバルだが、ウッドストックにはこのフェスティバルに見合った土地がないということで、ニューヨーク郊外のべセルというところで開催されており、名前だけにウッドストックが残ることとなった。

最終的に、若者たちの心の内にある精神的な「愛と平和」、ウッドストックによって人生を動かされた人々がいるという事実、そして現代の我々にはもうあのウッドストックは体験することは不可能ということが、ウッドストックを伝説化させている要因という結論にたどりついた。さらに、フェスティバル開催中に会場はまれにみる豪雨に襲われて、若者は泥まみれになって自然と一体化したこと。今振り返ってみるとこのフェスティバルがロックの絶頂期に位置し、70年代に入ってロックが衰退していったことが、さらに絶頂期であることを際立たせていること。このような大規模なフェスティバルがこの後に開催されていないことなど、目に見える要因が先に述べた要因にプラスされてウッドストック・フェスティバルを伝説化させているのではないだろうかと考える。



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