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在米韓国人

越前 奈々子

 

私は、自身がアジア人ということから、アジア系が多く居住するカリフォルニア州ロサンゼルスにあるコリアタウンで起きた「ロス暴動」と呼ばれる事件に興味を持った。この事件を通して、アメリカで暮らす在米韓国人がアメリカという多民族国家の中でどのような存在なのかを探ってみた。

 ロス暴動とは、1992429日に、ロドニー・キング事件に対する地裁陪審の無罪評決が下された直後にロサンゼルスで発生した黒人暴動である。黒人たちはコリアタウンの商店に襲いかかり、手当たり次第に破壊・略奪・放火をはたらいた。 この暴動により韓国人は膨大な損害を受け、韓国人対黒人というマイノリティ同士の対立が具体的な形になった事件といえる。

 しかし、この事件は単なるマイノリティ同士の対立が原因というわけではない。直接のきっかけとなるロドニー・キング事件は、 もともと「白人と黒人間の問題」であったが、ほぼ同時期に起きたもう一つの事件、斗順子(トウ・スンジャ)事件を、マスコミは「韓国人と黒人間の問題」と大々的に報道することにより、白人に対する黒人の怒りをいつの間にか韓国人へと向けさせた。ロス暴動の真の原因は、白人社会の優越意識に基づく人種差別なのである。

 ロス暴動では、マスコミによって現実以上に強調された韓国人と黒人だが、この二つのマイノリティ間には確かに問題があった。在米韓国人と黒人との関係は、良好とは言いがたい。60年代の公民権運動により法制度上の差別は撤廃されものの、その恩恵を受けることができた黒人は少数に過ぎなかった。それに対して、韓国人は血を流すこともなく公民権運動の成果を享受し、移民後十数年しかたたないのに、金を儲けてベンツを乗りまわす者さえいた。そんな韓国人に対して、黒人が嫉妬を感じたとしても無理はないだろう。

 また、在米韓国人には、単一民族意識が強く、アメリカを美化して捉える意識は白人への憧憬と同一である場合が多い、という特徴がある。結果として他のマイノリティへの理解を深めることをおろそかにしている。在米韓国人の中には、黒人を含む他のマイノリティに対する偏見もあり、その偏見が、互いに理解し合うためのコミュニケーションを阻んでいるのだろう。反目し合い衝突し合うのは、コミュニケーションを取って理解し合う努力をしなかったからである。

 ロス暴動は、黒人がコリアタウンを襲ったという部分だけを見ると、単なる「韓・黒葛藤」のように思える事件だが、実際その裏にあるものは、白人優越意識に基づく人種差別である。 この人種差別がなくならない限り、このような暴動が繰り返される可能性もなくならない。多民族社会であるアメリカで在米韓国人がより豊かに暮らすためには、まず他のマイノリティ間との理解・コミュニケーションを図り、連帯を深める必要がある。 

 

 


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