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現代のネイティヴ・アメリカン

小笠原 伯華

 

 サラダボウルと言われるアメリカにおいて、ネイティヴ・アメリカン(アメリカ先住民)はマイノリティの中のマイノリティである。そしてアメリカにいても、触れ合う機会の少ないネイティヴ・アメリカンに興味を持ち、調べることにした。

 彼らの歴史は正確な情報のない時代から始まっており、1890年代を境に大きく2つの時代に分かれる。白人によって土地を追われ、戦いを繰り返していたが、その後20世紀には文明的な白人社会に同化するよう強いられてきた。彼らの問題は、生活面と精神面の2つがある。

 ネイティヴ・アメリカンの少年は、部族の伝統を絶つという連邦政府の目的で、家族から遠く離れた寄宿学校へ通わされた。そこでは白人のように暮らす術を教えられたのだが、その結果彼らが得たものはネイティヴ・アメリカンとして生きるべきか、白人になってしまえばいいのか、という苦悩であったと思う。また、白人によって植え付けられたネイティヴ・アメリカン像が野蛮だったために、自分を恥じてしまうという若者も現れた。偉大な祖先たちはネイティヴ・アメリカンであることに誇りを持つよう教えを説いてきたにも関わらず、白人同化政策によってそれは崩されてしまった。今となっては逆に、白人化してしまったネイティヴ・アメリカンに部族の言葉や歴史を教えるという教育がされている。このようにネイティヴ・アメリカンは、自分を何人と定義づけるべきかというアイデンティティの問題を抱えていることが分かった。

 ネイティヴ・アメリカンは、居留地で暮らす人と都市で暮らす人に分かれている。居留地では失業率も高く貧しいが、家族の愛の届く保守的な生活を送っている。これと比べると、都市で暮らすことはある種の挑戦のようである。それは白人が持つアメリカンドリームに似ているようだ。しかし、やがては居留地へ戻る者が多い。それはアメリカの社会がネイティヴ・アメリカンを迎え入れるほどの余裕がないということ。そして、伝統を大切にする彼らにとって、自分のルーツのある家族の元へ帰っていくのが自然なことだったからかもしれない。

 ネイティヴ・アメリカンは高い自殺率、アルコール中毒率、失業率が目立つ。これはネイティヴ・アメリカンであることに将来の希望を見出せないという現れであると考えられる。

 現代をネイティヴ・アメリカンとして生きるということは大変複雑なことであると思う。 たとえ白人と同じ生活をしたとしても、祖先から受け継いだ思想や誇りを子孫にも伝えていくことが、元来のネイティヴ・アメリカンらしく生きる一番近い方法ではないかと思う。



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