中村(敦)研究室
       
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卒 論

Have the dream come true?

マーティン・ルサ-・キングJr.の非暴力抵抗について

安 藤 尚 徳

 私は、大学1年生のとき、授業でマーティン・ルサー・キングの"I Have A Dream"スピーチを聞いて以来、彼の生い立ちやなぜアメリカにおいて彼が英雄的な存在になったのかについて興味を持った。彼の残した大きな功績の一つとして知られるのが、差別に対して「非暴力」で抵抗したということであり、それを一般に広めたことである。彼独特の思想の源流を探っていくと、ヘンリー・デイビッド・ソロー(1817−62)とマハトマ・ガンディ(1869−1848)に辿り着くことができる。彼らの暴力を用いない思想を使うことによって、それまでと違う、「共存」を目的とした抵抗を試みることができたといえる。そして、この「非暴力抵抗」は暴力的な手段を用いるよりも、より相手に与える心理的影響も大きく、運動を推進する大きな利点となったといえる。この思想はキングがワシントンのリンカーン記念堂で語った夢を実現するために不可欠であったものである。

 黒人の生活は60年代の公民権運動をきっかけに大きく変化したといえるだろう。キングの名前が広く社会に知られだした頃、まだ多くの地域に"White only"という看板が並んでいた。レストラン、バスの停留所、公衆トイレなどそのような公共施設は数多く存在した。今考えると、「そんなことが本当にあったのか」と耳を疑うようなことかもしれないが、そのような差別をなくし人間として当然の権利を得るためだけにキングをはじめとする黒人達は激しい公民権運動を繰り広げた。職種を見ても黒人の生活の向上ははっきりとみることができる。1983年には黒人の「使用人・召使い」という職業は全体の42%を占めていたが、今では15.4%まで減っている。しかし、現在においても決して差別がなくなったとは言いがたい現状もある。例えば、収入面においてであるが、同じ学位や資格をもっていても黒人の所得は白人のそれよりも少ないという現状だ。
 
 このような状態をみると、キングの非暴力抵抗や公民権運動は成功したとも言えるし、未だ途中の段階にあるともいえる。バスボイコット事件や、ランチカウンターでの座り込み運動などは黒人の生活状態の向上に大きな影響を与えたといえるが、その反面多くの暴動事件もおきている。キングはベトナム戦争の反戦運動を実施したが、アメリカはまだ戦争をしている。もちろん国際関係や政治などの複雑な要素も絡み合っているのはわかっているが、それでも、もし今キングが生きていたらきっとこう言うだろう。「人を殺して得られるものは平和ではない」と。今後私達は将来も視野に入れて世界平和を考えていかなければならない。世界の全ての人が平和に、人間として当然与えられるべき生活をするために、暴力や戦争などではなく共感的理解と共存が求められている。キングが残した最も大きな功績はこのような考え方ではないだろうか。


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