【卒業論文(2004)】 アメリカ生まれのブルース 児 玉 梨 奈 目次: アメリカ音楽の発達を辿るとき、奴隷として連れてこられた黒人たち抜きでは語れない。なぜなら、アメリカ史の6割くらいは黒人奴隷と差別で作り上げられてきたものであり、それが音楽にも反映されているからである。黒人奴隷発祥のブルースと言う音楽は、多くの音楽の源になっており、今日のアメリカ・ポップスの根底になり生き続けている。なぜ、奴隷として扱われ差別されていた黒人達の音楽が白人にまで聴かれるようになり、現在のポピュラーミュージックの根底に流れるまでに至ったのだろうか。この矛盾に興味を持ち、ブルースを基盤に研究を進めた。 ブルースはアフリカから奴隷として連れて来られた黒人たちが奴隷として扱われ、イギリスからアメリカに渡ってきた白人によって支配や人種差別を受け重圧を受ける中、必死に自由を求めてきた彼らの叫び声である。この音楽はとても重いリズムがベースになっていて、労働中の苦難によりこぼれた「ぼやき」から始まった歌は苦しそうで叫び声のようにも聞こえる。このブルースには二面性が存在し、そこには「無限の可能性と堕落」が見られる。またその中には黒人達が見つけた「誰もがもてる生きる自由」が希望として現れている。この希望として表れている音を始め後に白人達にも受け入れられていくのだが、皮肉にもブルースは黒人達が奴隷としてアメリカに連れて来られなければ生まれなかった音楽である。この音楽の背景には白人による黒人達の支配・差別があったにもかかわらず、結果的に黒人達によって作られた音楽がアメリカを覆う形になっているという事実も浮かび上がる。 ブルースが現代のアメリカポップミュージックの中に引き継がれた部分を分析すると、アメリカが本当に持つべき「自由」が語られ、また彼ら自身も核心的にはそれを求める気持ちが現れているようである。ブルースは多くの矛盾や皮肉を抱えながらも、どこかで繋がれるような希望をいつも与え続けているのではないだろうか。人種や宗教に関係なく、皆同じ人間であり、揺るぎ無い「生きる自由」を持つ。そこで繋がることが出来るということを最大のメッセージとして秘めながら今日もアメリカに健在している。人生や自由を奪われた黒人奴隷たちの一生は決して無駄ではなかった。彼らが見つけた希望への光は、本当の自由を示す偉大な力としてこれからもアメリカを照らしていくことだろう。
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