ジェンダーからみたアメリカの女性

宮津 緩子

 

 ジェンダーとは性役割規範、つまり「男らしさ」、「女らしさ」のことである。現在アメリカは自由と平等の国というイメージがあり、男女にそれほど違いがないように見えるが初めから平等だったわけではない。1950年代後半〜1970年代前半まではアメリカは国の繁栄のため国内状況は家庭を作り家族を増やすためにベビーブームが起こり、女性は「産む」ということを強いられ、男性に守られる「弱い性」と差別されてきた。この、「男は仕事、女は家庭」という性役割規範によって男女の間に権力関係がうまれたことにより女性を実験台にした生殖技術、セクシャル・ハラスメントやレイプ、ドメスティック・バイオレンス(DV)などの女性差別が問題になっている。特にDVは女性の基本的人権を脅かす重大な犯罪である。日本語に訳すと家庭内暴力なので子供による親への暴力も意味するが、たいていは男女の親密な関係の間におこる暴力を意味する。 DVはケンカと犯罪の区別が曖昧で、どこまでが許される暴力なのか判断しにくく被害者を救済するのは難しいが暴力はどんな理由があっても許されない。

 女性が男性中心の支配的社会を疑うまでDVは犯罪とは認識されず、19世紀後半までアメリカでは夫が妻に暴力を振るうことは法律で公的に認められていた。昔から妻は夫の所有物のように扱われていたので、思い通りにならなければ殴ることは当然とされ、女性の人権はあまり重視されていなかった。現在はワシントンD.C.でDV法廷が設立され、DVを防止する法律によって多くの被害者が支援されているが、加害者の意識を変えていかなければ法律ができても解決策にはならない。DVとは「男は強く、女は従うもの」という男性の支配的な性差別が具体的に表面化している問題であり、この問題が解決されなければ女性はこれからも差別の対象であり、男女が平等な社会にするのは困難である。

 アメリカが自由と平等であるというのはあくまでもイメージに過ぎず、解決しなければならない問題がたくさんある。女性に関する問題だけでも性差別、人種差別、貧困、母子家庭、外見による偏見や暴力など他にもまだ多くの課題がある。日本にも家父長制が文化に根強く残っているのでジェンダーの性役割規範から起こる同じような女性に対する差別がある。一度ついてしまったイメージや偏見、差別意識はなかなか消すことはできない。まずは、このいまだに残っている男らしさ女らしさに対する人々の意識や文化を考えなおしていくことが男女の権力関係をなくすための第一歩だと思う。


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