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アメリカの食に求められているもの

岩村 奈緒

 味覚障害とは現代成人病の一つと言われている病気で、アメリカに住む多くの人は、発生の原因の一つである「片寄った食生活」によって、症状が発生していると考えられる。現在アメリカで平均的に食べられている毎日の食事は栄養学から見るとお粗末なものばかりなのが現状である。ソフトドリンクやシリアルなど、糖分を含みすぎる食品を摂取し過ぎる為に、脳に障害をきたし、味覚を判断する脳の機能を低下させてしまう危険性がある。つまり、普段の食生活によって、味覚障害が作り上げられてしまったのではないだろうか。実際に「アメリカの料理は美味しくない」という言葉は、アメリカに滞在していた人や旅行をした人の感想として、彼らのHPなどでよく見かけることができる。

では、アメリカ人が食に対して最も重点を置いているものは何だろうか。それは、エンターテイメント性と、利便性の2つであると考えられる。

元来、アメリカは非常にエンターテイメント性が強く求められる国である。食においても例外ではなく、最近アメリカで流行になっているSUSHI BARは日本の寿司屋をモチーフにしてはいるものの、寿司を握る技術そのものはあまり問題とされていない。「握る」というパフォーマンスをいかに上手く見せることができるか、客をいかにして楽しませることができるか、すなわち寿司を握る行為は「技術」ではなく「芸」として認識されていてそのパフォーマンスが人気になっていると言える。

利便性の面では、アメリカには調理時間の短縮を第一においた簡易食品が数多く存在している。共働きやシングルマザーが多く、専業主婦でもボランティアなど忙しく働きまわっていることが多いため、じっくり料理を作る暇がない。そんな人が大勢いるから、数多くの簡易食品生まれたのだろう。

食の味に対する欲求よりも楽しいことや便利なことを優先させるアメリカの食。普段から新鮮な物よりも、科学的に加工された食品を口にしているから、日本において倫理面から謙遜される遺伝子組み替えなどの加工を行われても、それほど抵抗感がなかったのかもしれない。ここ最近の間に、日本にはシングルマザーや単身赴任者、共働きの核家族が着々と増え続けており、できあいのお惣菜が確実に売上を伸ばしている。今年の売上は6兆円をみこんでいるという。各スーパーはどこもお惣菜コーナーに力を入れ、他店舗との差別化を計っている。女性の社会進出が活発化し、日本の生活がだんだん忙しくなってきている。それに伴い、食生活や食の意識もだんだんアメリカに近づいてると言える。そして、日本の若者に味覚障害に悩んでいる人が数多く出てきている。今後、大問題にならないうちに自らの食生活を振り返って見ることが、今の日本に必要なのかもしれない。