◆トップ ◆ゼミ論


ホームスクール

 後藤 倫子

 「ホームスクール」(homeschool)、この言葉は日本では聞き慣れないものだと思います。「ホームスクール」とは、子供を公立学校や私立学校に行かせず、自分の家で教育するものです。

 私がこのシステムを知ることが出来たのは、アメリカへ留学した時のことでした。その時のホストファミリーがこのシステムを利用していたのですが、私はこのホームスクールというものがとても不思議なものに思えて、今回ゼミ論のテーマにしました。ホームスクールについて調べていくにあたり、3つの項目に分けてまとめました。

1.ホームスクールを行っている人達の特徴:@圧倒的に白人が多いこと。A両親がともにそろっている核家族で、主に両親は大卒者が多いこと。B中産階級であること。C熱心なキリスト教信者であり、保守的であること。これらがホームスクールを行っている人達の特徴になります。

2.ホームスクールについての法律:子供を学校へ通わせることは義務とされています。しかし、学校へ行かせずに家庭で教育を受けさせることは、法に違反しないのか。教員の資格がなくても子供を教えることはできるのか。こういった疑問が出てきます。世界人権宣言第26条3項によると「親は子に与える教育の種類を選択する優位的権利を有する」とあります。また、アメリカ合衆国憲法第1,4,5,9,14回修正からも、ホームスクールは合法と言えるのです。現在では、アメリカの全ての州は合法としています。

3.ホームスクールと学校:ホームスクールをしている親達の学校に対する気持ちは本当に様々です。彼らは、自分の権利を守ることについては、本当に熱心です。権利を守るということは、ある親にとっては学校との関係を一切断ち切ることです。またある親にとっては、学校が提供してくれるサービス(課外行事への参加や学校図書館の利用など)を自分たちの判断で自由に利用できる関係を作ることとする親もいます。一方、教育委員会などでは、ホームスクールの子供達のために、より包含的な教育的プログラムの開始を提案している州も出てきています。「子供のため」と言う気持ちは、親であっても学校であっても同じことです。しかし、家庭と公教育の関係については、様々な考えがすでに定着しているがために、ホームスクールを行っている親達と既存の教育制度との間には複雑な関係が成り立ってしまっているのが、現状なのです。

アメリカには多くの人種がいます。それぞれに信仰するものも違い、民族的価値観も違います。その多様な中で定められた一定の教育をしていくこと、個人の価値観や、信仰するものを重視しつつ教育していくことなど、色々な教育の形があっていいと思います。どの方法を選択するかは、親であり教育を受ける子供であると思います。このホームスクールの背景には、アメリカのもっとも特徴的な「人種の多様化」、「多文化主義」が大きく絡んでいると感じました。