卒業論文

インディアンの精神文化

                                    宇田川 嶺

目次:

はじめに
 1.ミタクエオヤシン 2.ラコタと動物     3.円と七つの方角
          4.赤い道と黒い道  5.調和         6.個人主義による結束
結論:現代社会にむけて


 われわれがインディアンに対して持っている知識は、半裸で羽飾りをした未開人といった表面的なもので、その生活や信仰など、精神にかかわる部分についての知識は充分とは言えない。ハリウッド映画の中で偏ったインディアン像が作られたのは、そうした理解不足からである。本論では、合衆国で二番目に大きな規模のラコタ族に焦点を当て、彼らの崇高な精神について考察する。

 ラコタ族の思想を端的にあらわす言葉に、「ミタクエオヤシン」がある。これは「我らみな同胞」という意味で、この同胞が指すものは血縁や部族だけではなく、自然や動物、宇宙や神など、自分に繋がる全てのものを指す。この言葉は、ラコタ族の儀式や会議、選挙などに欠かせない言葉で、彼らの思想の根底にある。この考え方は、集団で狩りが行なわれるときに、狩りが上手な者が身寄りのない老人や幼子を抱えた未亡人に獲物を奉げるなど、部族の中で助け合いの精神を生む。また、自然界に対しても同胞と意識しているので、ラコタ族は動物を「まるで親戚のように親しい間柄」と呼び、人名や団体の名づけなど、様々な場面で自然界の存在が関係してくる。

 「ミタクエオヤシン」の思想は、「円」と「七つの方角」、「赤い道・黒い道」というものにモデル化される。キリスト教では十字架がシンボルであるように、ラコタ族では円がシンボルである。彼らは住居の設置方法を円の形に統一しており、メディスンホイール(聖なる輪)という円形のアクセサリーを身につける。ラコタ族にとって四と七は聖なる数であり、その由来は東西南北の四方向、それに天と地、中心である心の三方向を足した七方向である。彼らの儀式の多くは四日間で行なわれ、季節は春夏秋冬、動物は這うもの・飛ぶもの・二本脚・四本脚の四種と、多く事柄を四という数字で仕切る。仏教に「輪廻転生」の思想があるように、ラコタ族にも「赤い道・黒い道」という思想がある。これは人が死んだとき、周囲と調和して生きた者は赤い道へ行き、宇宙の中心にいる創造主の元に帰ることができる、自分勝手に生きてきた者は黒い道へ行き、再び生まれ変わり成長と拡大の機会を与えられる、というものである。キリスト教の善悪の観念とは異なり、「周囲との調和」が判断基準であるところが、自然と共にいきるラコタ族らしい者の考え方である。

 このように「ミタクエオヤシン」に基づいたラコタ族の思想は精神的に高度なものである。彼らの思想は、物質的な豊かさばかり追求した現代人が見習うべきところがある。人と仲良くし、自然環境を大切にして、我々は調和の輪を築くべきではなかろうか。