アメリカン・ヒーローの誕生！

川村　宗丈

　アメリカン・ヒーローとはどのようにして誕生するのかという疑問が、興味より先に私が思ったことである。私はアメリカという国には、いささか異常とも思えるヒーロー熱が存在しているように思える。なぜアメリカ人は、そこまでして常にヒーローを求めているのであろうか。又、アメリカ人がヒーローに求めるものは何か。これらのことが分かればアメリカ人のヒーロー像が見えてくると思い、調べることにした。

　ヒーローと一言でいっても様々な分野のヒーローがいる。映画の中で活躍するロッキーやランボーのようなヒーローを例にあげると、彼らがアメリカ人の基本的な感情に強く訴えるものであることは、伝統的なアメリカ映画をちょっと振り返って見るだけでも一目瞭然だろう。西部劇におけるフロンティアのヒーローは、たいていこういった感情の上に成り立っている。つまり、ロッキーにしろランボーにしろ、そのヒーロー像のもとには、アメリカ人がフロンティア時代から培ってきた原始的な生命力を発揮する自由人、つまり肉体と精神を極限にまで活動させ、苦境をしのぎ、本能のままに行動する人、いろんな意味で非人間的な世界で人間的な価値を実現する者の姿がある。

　アメリカの異常とも思えるヒーロー熱には、それなりの理由があると思い、私はアメリカの歴史に着目してみた。アメリカ人というのは、他の土地から危険をおかしてアメリカ大陸へ移ってきた移民たちである。ではなぜかというと、基本的にはアメリカで成功したいという「サクセス・ドリーム」に駆られてのことであった。そして成功した者は、大いなる賞賛を受けるのである。つまり、アメリカン・ヒーローは、成功者でなければならないのである。もちろん、敗北者への同情は存在するが、それは賛美にはつながらないのである。これは、日米のヒーロー観の違いが顕著にあらわれている点であると思う。しかしながら、歴史が浅く、建設途上のアメリカでは、そういう美意識は許されなかったし、又、そういう価値観が十分に熟成する余裕もなかったと言わなければならないのは事実である。

つまり、アメリカ人の求めるヒーローとは、「アメリカ人とは何か」ということを、理想的な形で身をもって示してくれる人間こそがなり得るのである。それはもはや、性的、人種的、社会的に、多様な要素を反映するものでなければならない。そういう人間を、新しく見出したフロンティアの上に活躍させる時、よそおい新たなヒーロー像が形成され、アメリカン・ヒーローはまた新しい神話時代を迎えるかもしれない。